Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、フィリピンのCO2排出量は1990年から2019年の約30年間にわたり、おおむね一貫して増加してきました。特に2017年以降の直近数年間では、年間増加量が加速している傾向が見られ、2019年には約2億5,900万トンに達しました。ただし2020年、新型コロナウイルス感染症による経済活動の停滞が大きく影響し、CO2排出量は約2億4,700万トンに減少しました。
「フィリピン」のCO2排出量推移
年度 | CO2排出量 |
---|---|
2020年 | 247,475,087トン |
2019年 | 258,590,639トン |
2018年 | 251,904,014トン |
2017年 | 245,400,409トン |
2016年 | 228,598,554トン |
2015年 | 215,832,275トン |
2014年 | 206,108,345トン |
2013年 | 199,136,980トン |
2012年 | 190,553,706トン |
2011年 | 183,718,282トン |
2010年 | 182,061,659トン |
2009年 | 175,449,921トン |
2008年 | 173,838,243トン |
2007年 | 165,427,930トン |
2006年 | 159,527,052トン |
2005年 | 164,718,023トン |
2004年 | 164,176,404トン |
2003年 | 159,400,211トン |
2002年 | 157,813,570トン |
2001年 | 156,441,425トン |
2000年 | 157,258,728トン |
1999年 | 152,200,206トン |
1998年 | 143,680,914トン |
1997年 | 152,875,478トン |
1996年 | 144,135,485トン |
1995年 | 140,225,375トン |
1994年 | 132,499,179トン |
1993年 | 123,274,871トン |
1992年 | 120,889,912トン |
1991年 | 116,580,594トン |
1990年 | 113,035,074トン |
フィリピンのCO2排出量推移データを分析すると、1990年から2019年までの期間にわたりCO2排出量がほぼ一貫して増加していることがわかります。1990年の約1億1,300万トンから2019年の約2億5,859万トンへとおよそ2.3倍に達し、特に2000年代後半からは増加ペースがやや加速している傾向が見られました。この増加の背景には、フィリピンの経済成長やエネルギー需要の拡大が強く関連しています。
フィリピンはアジア地域の中でも急速な人口増加と産業発展の局面にあり、石炭や石油といった化石燃料への依存度が高いエネルギー構造を持っています。特に工業化や都市化が進む中、電力供給の多くが石炭火力発電に依存している現状が、CO2排出量増加の主因と考えられます。他の国々、例えば日本やドイツなどでは再生可能エネルギーの導入や省エネ技術の採用が進んでいますが、フィリピンではそうした環境技術の普及は限定的です。
直近では、新型コロナウイルス感染症の影響が顕著に現れた2020年にCO2排出量が減少しています。この年の排出量は約2億4,748万トンと、ピークである2019年からおよそ4%減少しました。これには世界的な経済活動の停滞の影響があり、特に交通や産業部門の活動縮小が寄与するとみられています。この現象はフィリピンに限らず、世界的な傾向としても観察されています。
今後の課題として、フィリピンは経済成長と環境持続可能性の両立を目指す必要があります。他国との比較で示すと、例えばアメリカや中国のようにCO2排出量が非常に高い国々と比較すれば、フィリピンの排出量自体はまだ相対的に小さいものの、排出強度(GDP1ドルあたりの排出量)や成長率の観点で見ると、持続可能なエネルギー政策が求められる状況にあります。再生可能エネルギーの導入促進、エネルギー効率化の技術普及、さらには森林再生による炭素吸収量の増加といった具体的な政策が重要です。
また、地理的な制約としてフィリピンは多くの島嶼で構成される国であり、中央集権的な電力インフラではなく分散型の電力供給システムを構築する可能性もあります。近年では太陽光発電や水力発電といった地域性を活かした再生可能エネルギーの開発が進行中であり、これをさらに加速させることが望ましいでしょう。
地政学的リスクとしては、フィリピンは自然災害、とりわけ台風や地震といったリスクが高い地域に位置しているため、こうした災害がエネルギーインフラや経済に与える影響も考慮する必要があります。再生可能エネルギーへの転換は自然災害時における脆弱性を軽減する可能性があるため、長期的な視点での政策転換が求められます。
結論として、フィリピンのCO2排出量は過去30年間で大幅に増加し、急速な発展に伴う課題が現れていますが、同時に再生可能エネルギー市場の成長の余地や分散型電力供給の展望といった可能性も秘めています。フィリピン政府や国際機関は、より積極的に省エネ技術やクリーンエネルギー政策を進めることで、将来的な環境負荷削減と経済発展の両立を図るべきです。