国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、バングラデシュのCO2排出量は1990年の約1億560万トンから2020年の約2億3,383万トンへと、大幅に増加しています。この間、特に2000年代後半以降の伸びが顕著で、工業化や経済成長が環境負荷の増加に寄与していることが確認できます。ただし、2020年にはわずかな減少が見られます。
「バングラデシュ」のCO2排出量推移
年度 | CO2排出量 |
---|---|
2020年 | 233,835,905トン |
2019年 | 234,437,533トン |
2018年 | 224,337,671トン |
2017年 | 216,618,149トン |
2016年 | 209,225,350トン |
2015年 | 206,561,923トン |
2014年 | 197,340,973トン |
2013年 | 191,121,576トン |
2012年 | 188,911,505トン |
2011年 | 184,142,982トン |
2010年 | 179,522,229トン |
2009年 | 172,903,939トン |
2008年 | 168,508,663トン |
2007年 | 160,513,946トン |
2006年 | 158,046,559トン |
2005年 | 151,635,931トン |
2004年 | 146,823,517トン |
2003年 | 144,258,479トン |
2002年 | 141,656,899トン |
2001年 | 138,520,601トン |
2000年 | 132,687,959トン |
1999年 | 129,858,264トン |
1998年 | 123,737,325トン |
1997年 | 123,613,595トン |
1996年 | 121,858,177トン |
1995年 | 121,093,867トン |
1994年 | 114,568,485トン |
1993年 | 111,042,140トン |
1992年 | 109,479,910トン |
1991年 | 106,881,048トン |
1990年 | 105,528,284トン |
バングラデシュのCO2排出量の推移を見ると、1990年から2020年にかけて約2.2倍に増加しています。これは、国の経済発展とともにエネルギー消費が急速に進んだことを示しています。特に2000年以降、年ごとの排出量増加幅がさらに拡大しています。例えば、2010年の約1億7,952万トンから2019年の約2億3,443万トンへと10年間で約5,500万トン増えており、エネルギー需要の増大と化石燃料への依存が大きな要因と考えられます。
地域特有の背景として、バングラデシュは人口密度が非常に高く、産業部門の急成長が進んでいます。繊維産業を中心とした輸出拡大、都市化の加速、および電力需要の増大が、排出量増加を押し上げる主要因であることが分かります。一方で、バングラデシュにおける一人当たりのCO2排出量は、依然としてアメリカや中国、日本などの先進国と比較して低い水準にあります。ただし全体排出量の増加ペースを鑑みると、早急な対策が必要です。
2020年に排出量がわずかに減少したことについては、新型コロナウイルスのパンデミックの影響が考えられます。世界的な物流の停滞、主要産業の活動制限、都市封鎖(ロックダウン)などが、CO2排出削減の一因となった可能性があります。しかし、一時的な減少に過ぎず、根本的な解決には至っていません。
バングラデシュの未来に向けて、いくつかの課題が指摘できます。まず、発電部門の改善が急務です。同国のエネルギー供給は依然として化石燃料に大きく依存していますが、再生可能エネルギー、特にソーラー発電や風力発電への転換を加速させる必要があります。また、都市部の公共交通システムの整備や電動車両の普及、工業化に伴うエネルギー効率の向上も重要です。
さらに、地政学的リスクとして、海面上昇や気候変動の影響にも触れる必要があります。バングラデシュは地理的に低地が多く、気候変動が国内資源に及ぼす影響が懸念されています。この地域では洪水やサイクロンが頻発し、これらの災害が経済発展とCO2排出量抑制の両面で障害を及ぼす可能性があります。同時に、インドや中国など隣国との協力体制の構築が、地域全体の環境課題にとって不可欠です。
結論として、バングラデシュのCO2排出量データは、経済成長と環境負荷の調和という難題を浮き彫りにしています。国際的な支援を受けつつ、自国としても再生可能エネルギー投資の拡大や、気候変動対策と経済発展を両立させる政策が必要不可欠です。国際機関や主要国が技術移転や資金支援を強化することで、より持続可能な発展が可能となるでしょう。