国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データ(2024年11月更新)によると、メキシコのCO2排出量は1990年から2020年までの30年間で大きな増減を見せています。1990年の506,254,461トンから2008年の848,969,347トンへと着実に増加し、その後減少傾向に転じています。最新の2020年のデータでは、725,116,931トンと過去10年以上ぶりに700万トン台を記録しました。
「メキシコ」のCO2排出量推移
年度 | CO2排出量 |
---|---|
2020年 | 725,116,931トン |
2019年 | 792,262,355トン |
2018年 | 808,621,923トン |
2017年 | 816,092,221トン |
2016年 | 827,562,233トン |
2015年 | 809,409,607トン |
2014年 | 824,231,107トン |
2013年 | 824,950,410トン |
2012年 | 816,892,124トン |
2011年 | 815,167,253トン |
2010年 | 812,343,476トン |
2009年 | 824,449,516トン |
2008年 | 848,969,347トン |
2007年 | 791,521,876トン |
2006年 | 769,041,042トン |
2005年 | 742,205,504トン |
2004年 | 705,088,034トン |
2003年 | 704,442,782トン |
2002年 | 669,713,820トン |
2001年 | 667,268,993トン |
2000年 | 656,067,137トン |
1999年 | 646,755,325トン |
1998年 | 653,823,416トン |
1997年 | 627,595,884トン |
1996年 | 582,429,140トン |
1995年 | 551,562,457トン |
1994年 | 555,746,731トン |
1993年 | 533,504,660トン |
1992年 | 521,180,563トン |
1991年 | 517,155,878トン |
1990年 | 506,254,461トン |
メキシコのCO2排出量の推移を見ると、1990年から2000年にかけて緩やかに増加し、2000年代前半に顕著な上昇が見られます。この増加は、メキシコの経済成長とエネルギー需要の拡大に起因すると考えられます。経済の拡大に伴い、自動車や産業部門からの排出量も増加し、2008年には過去最大の848,969,347トンを記録しました。この年は、世界金融危機が始まる直前の年であり、多くの産業が活発だったことが影響したものと推測されます。その後、2009年に排出量が初めて減少に転じていますが、これは金融危機による経済活動の停滞が主要な要因です。
2015年以降のデータを見ると、CO2排出量は800万トン前後で横ばいとなり、2019年以降減少傾向となっています。そして、2020年には725,116,931トンと大幅に減少しました。この急減には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が大きいと考えられます。ロックダウン措置により経済活動が大幅に縮小し、輸送や産業活動が減退したことが背景にあります。
これらの数字が示す通り、メキシコのCO2排出量の変動には、経済状況や外部的な要因が大きく関与しています。しかし、ここから浮かび上がる課題として、排出量の削減が構造的・継続的な取り組みによるものではなく、一時的な外的要因によるものであることが挙げられます。
日本やドイツなどの先進国と比較すると、メキシコはまだ再生可能エネルギーへの切り替えやエネルギー効率向上の取り組みに遅れをとっていると言えます。たとえば、ドイツでは再生可能エネルギーが全体の電力供給の4割以上を占めていますが、メキシコではその割合が依然として低い状況です。また、交通インフラの電動化や公共交通機関の整備も課題となっており、自動車に依存するエネルギー消費が高いままとなっています。
さらに、エネルギー政策にも地政学的なリスクが影響しています。アメリカとの協力や中南米諸国との連携が鍵となる一方で、国内政治や地域紛争が安定的なエネルギーシフトを進める上での障壁となる可能性があります。加えて、気候変動による自然災害の頻発もメキシコ経済に直接的な影響を及ぼし、環境対策への余力を奪う恐れがあります。
今後、メキシコが持続的にCO2排出量を削減していくためには、具体的な対策が必要です。たとえば、再生可能エネルギーへの投資拡大、交通インフラの電動化推進、エネルギー効率の向上、加えて林業や農業を活用した炭素吸収策の確立が挙げられます。また、地方自治体による草の根レベルでの取り組みと、企業による自主的な削減目標の設定を奨励する政策も有効です。
国際連携も重要であり、特に中米地域やアメリカとの協力枠組みを強化することで、技術移転や資金援助を得られる可能性があります。最終的には、国際的な脱炭素の潮流の中で、メキシコが経済発展と環境保護を両立した持続可能なモデルを確立していくことが期待されます。そのためには、政府、企業、国民が一体となった行動が欠かせません。