国際連合食糧農業機関の最新データによると、リトアニアのCO2排出量は、1992年の約3,489万トンをピークに、その後大幅に減少したものの、2000年代以降は緩やかな増加傾向を見せています。特に2007年以降は再び高いレベルで推移しており、2019年は約2,892万トンに達しました。一方、2020年にはCOVID-19の影響により約2,763万トンまで減少しましたが、全体的には27~29百万トンの範囲に収まる緩やかな変動が続いています。
「リトアニア」のCO2排出量推移
年度 | CO2排出量 |
---|---|
2020年 | 27,627,487トン |
2019年 | 28,925,290トン |
2018年 | 28,869,524トン |
2017年 | 29,622,750トン |
2016年 | 28,756,772トン |
2015年 | 28,763,984トン |
2014年 | 27,626,688トン |
2013年 | 26,723,635トン |
2012年 | 28,543,404トン |
2011年 | 28,053,298トン |
2010年 | 26,039,708トン |
2009年 | 25,083,885トン |
2008年 | 29,134,672トン |
2007年 | 29,533,201トン |
2006年 | 26,234,898トン |
2005年 | 26,110,923トン |
2004年 | 25,190,550トン |
2003年 | 24,513,919トン |
2002年 | 24,288,555トン |
2001年 | 23,873,085トン |
2000年 | 22,528,618トン |
1999年 | 24,897,525トン |
1998年 | 27,786,132トン |
1997年 | 26,837,690トン |
1996年 | 27,404,017トン |
1995年 | 26,331,504トン |
1994年 | 27,325,099トン |
1993年 | 28,528,226トン |
1992年 | 34,890,923トン |
リトアニアのCO2排出量の推移を見ると、1992年に記録された約3,489万トンが最も高い値となっています。この時期は、ソビエト連邦崩壊直後であり、重工業が中心の経済構造を持つリトアニアが環境に与える影響が顕著だったことがわかります。経済構造の転換が進んだ1993年以降、エネルギー効率の改善や産業の縮小によって排出量は着実に低下していきました。2000年には約2,252万トンと、1992年の約64%にまで減少しており、この期間を通じてリトアニアが進めてきた産業政策やエネルギー戦略が成功したことがうかがえます。
しかしながら、2000年以降のデータでは排出量の減少傾向が鈍化し、むしろ2007年には再び2,953万トンと増加に転じています。2007年から2008年の上昇は、経済成長や消費活動の活発化、モータリゼーションの進展などによるものと考えられます。その後、2009年には世界金融危機の影響で一時的に排出量が減少していますが、2011年以降は再び増加傾向が続き、直近では28百万トン台に達しました。この増加傾向は、特にエネルギー消費量の増加と交通部門における排出が主要因となっています。
COVID-19パンデミックが拡大した2020年には、一時的にCO2排出量が減少しています。これは、世界的な移動制限や経済活動の停滞がもたらした影響と一致していますが、パンデミック以降の回復期における排出量のリバウンドが予測されており、一時的な減少に過ぎない可能性があります。
リトアニアの課題として、交通や建築部門から排出されるCO2が依然として高水準である点を挙げることができます。新しいエネルギー政策の策定や、電化・再生可能エネルギーへの転換が急務です。例えば、電気自動車への転換を加速させるためのインフラ整備や、住宅や商業施設の断熱性能の向上が具体的な対策となり得ます。また、再生可能エネルギーの導入も、長期的にCO2削減の鍵となるでしょう。
地政学的背景にも目を向けると、リトアニアがロシアやベラルーシなどの隣国から天然ガスや石油の供給を大きく依存していたことが、そのエネルギー構造の転換への障壁となっていたことも指摘できます。しかし、近年では欧州連合(EU)のエネルギー政策や地域協力を通じて、エネルギー自立が徐々に進んでおり、グリーンエネルギーの普及が期待されています。
今後、リトアニアが直面する課題は特に脱炭素化への加速です。産業部門や交通インフラにおける温室効果ガスの排出削減を実現するためには、新しい技術への投資や、国民への啓発活動が不可欠です。また、国際的な枠組みの中で排出削減の責任を共有し、欧州連合内での共同目標達成に向けてポジティブな役割を果たすことも重要です。このような努力によって、リトアニアは今後もより持続可能な社会への移行を進めることができるでしょう。
結論として、歴史的なデータからリトアニアのCO2排出量の変動は、経済・政策、そして地域的・国際的な要因によって影響を受けてきたことが明らかです。これからの未来に向けて、リトアニアだけでなく国際社会全体で協力し、気候変動への対応を推進していく必要があります。