国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、オーストラリアのCO2排出量は1990年の約5.1億トンから2020年の約5.4億トンまで推移しています。1990年代から2000年代にかけて排出量は増加傾向を示し、特に2001年から2011年にかけて最も高いピークを記録しました。その後、2012年以降はおおむね減少傾向がみられますが、依然として排出量は高水準にあります。2020年には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあり、直近では顕著な減少が見られます。
「オーストラリア」のCO2排出量推移
年度 | CO2排出量 |
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2020年 | 540,172,839トン |
2019年 | 591,349,375トン |
2018年 | 617,492,139トン |
2017年 | 620,394,735トン |
2016年 | 582,615,391トン |
2015年 | 612,889,960トン |
2014年 | 611,931,384トン |
2013年 | 600,285,977トン |
2012年 | 698,505,493トン |
2011年 | 705,575,375トン |
2010年 | 604,327,721トン |
2009年 | 623,702,114トン |
2008年 | 606,325,527トン |
2007年 | 625,205,565トン |
2006年 | 625,456,214トン |
2005年 | 570,808,220トン |
2004年 | 604,243,212トン |
2003年 | 552,619,133トン |
2002年 | 638,039,956トン |
2001年 | 633,630,171トン |
2000年 | 616,497,955トン |
1999年 | 593,285,453トン |
1998年 | 552,923,318トン |
1997年 | 534,263,124トン |
1996年 | 528,455,076トン |
1995年 | 518,568,943トン |
1994年 | 515,501,994トン |
1993年 | 517,704,339トン |
1992年 | 510,397,015トン |
1991年 | 506,800,626トン |
1990年 | 509,688,785トン |
オーストラリアのCO2排出量の推移を時系列で見ると、いくつかの興味深い特徴と背景が浮かび上がります。1990年代から2000年代初頭にかけて、オーストラリアの炭素排出量は一貫して増加しています。この増加の主たる原因としては、石炭を主力としたエネルギー政策、鉱業の拡大、さらには輸送や産業部門の成長が挙げられます。特に1999年から2001年にかけては、年間約2,000万トンと急激な増加が記録され、オーストラリアの工業やエネルギーセクターが活発化していた時期を反映しています。
2011年には約7億トンという最高値に達しました。この時期は化石燃料に依存した経済が強調されており、特に石炭輸出の拡大が大きく影響しています。しかし、2012年以降、オーストラリアのCO2排出量はおおむね減少傾向をたどっており、これは政府や産業界がクリーンエネルギーの導入や排出削減を目指す取り組みを進めた結果と考えられます。
2020年には約5.4億トンと、30年間で最も低いレベルに減少しました。この背景には、COVID-19の世界的拡大による経済活動の縮小が大きな影響を与えています。輸送や工業稼働の一時的な停滞は、二酸化炭素の排出削減に直接寄与しました。ただし、この減少は一過性のものであり、根本的な対策ではないことを認識しておく必要があります。
オーストラリアは、世界規模でみるとCO2排出量ランキングの中位から上位に位置する国です。一人当たりの排出量では特に高い水準にあり、その値は多くの先進国や新興国を上回っています。これは、石炭火力発電や農業分野におけるメタン排出など、オーストラリアの特有の産業構造によるものです。また、気候変動の影響を最も早く受ける国の一つとして、水不足や山火事などの形で環境問題が深刻化しています。
オーストラリアが直面する課題は明確です。第一に、クリーンエネルギーへの転換が急務です。太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーのポテンシャルが高いにもかかわらず、依然として化石燃料に依存している状況は、迅速な政策転換を必要としています。また、農業部門における温室効果ガスの削減も重要で、メタン排出削減技術の導入や、持続可能な農業への取り組みが求められます。加えて、大規模な植林や森林保全プログラムの実施も効果が期待されます。これにより、炭素の吸収能力を高め、排出量削減の相殺を図ることができます。
地政学的に、オーストラリアはエネルギー資源の輸出国として他国との関係が強く、特にアジア諸国、例えば中国や日本への石炭輸出が経済の柱となっています。これが、再生可能エネルギーへの転換の阻害要因となるケースもあり、政策転換には国際協力が欠かせません。同時に、国内の災害リスク管理、とりわけ気候変動が引き起こす植生火災の影響に対応する能力の強化も急務といえます。
結論として、オーストラリアはCO2排出量を減らすためにすでに一定の進展を見せていますが、その速度は依然として気候変動の深刻化に対応するには不十分とされています。政府は再生可能エネルギーの導入を加速し、農業分野での持続可能な技術革新を推進する必要があります。また、国際社会に対して、長期的な炭素削減に向けた明確な枠組みを示し、地域間協力を強化することが必要不可欠です。これにより、オーストラリアは持続可能な未来を目指す先進国としてその地位を再構築することができるでしょう。