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フランス

France

フランスのCO2排出量推移

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、フランスのCO2排出量は、1990年の約5億6,100万トンをピークに一時的な増減を繰り返しながらも、全体として減少傾向にあります。特に2020年は約4億500万トンとなり、過去30年で大幅な削減が観察されます。特にこの年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で経済活動の停滞が寄与した可能性があります。このデータには、フランスのエネルギー政策や産業構造の変化、地球温暖化対策の取り組みなどが反映されています。

「フランス」のCO2排出量推移

年度 CO2排出量
2020年 405,026,241トン
2019年 459,480,561トン
2018年 472,104,543トン
2017年 487,692,780トン
2016年 482,325,226トン
2015年 481,569,100トン
2014年 476,102,750トン
2013年 505,246,319トン
2012年 505,527,315トン
2011年 505,979,570トン
2010年 528,172,603トン
2009年 521,895,148トン
2008年 539,998,414トン
2007年 543,411,801トン
2006年 545,283,973トン
2005年 557,860,574トン
2004年 557,318,155トン
2003年 556,300,226トン
2002年 552,523,523トン
2001年 557,747,436トン
2000年 539,783,484トン
1999年 543,630,621トン
1998年 554,880,386トン
1997年 537,092,106トン
1996年 561,514,495トン
1995年 532,727,497トン
1994年 522,859,824トン
1993年 548,684,008トン
1992年 552,873,375トン
1991年 576,416,456トン
1990年 561,133,637トン

フランスのCO2排出量の推移を見ると、1990年以降の排出量はおおむね減少しています。1990年の約5.61億トンから2020年の約4.05億トンに至るまで、約1.56億トン(約28%)の削減が達成されています。この削減は、フランス政府が再生可能エネルギーの推進や原子力発電の積極的な利用による電力部門の脱炭素化を進めてきた成果と考えられます。国際的な地球温暖化対策として採択されたパリ協定以前から、フランスはヨーロッパの中でも比較的環境意識の高い政策を実行してきたという特徴があります。

中でも注目されるのは、2020年の急激な排出量減少です。この年のCO2排出量は前年度の約4.59億トンから約4.05億トンへと約12%減少しました。これは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるロックダウンや移動制限、航空便の減少など、大規模な経済活動の縮小によるものと推定されます。これは世界各国でも類似の傾向が観察されており、一時的な削減にとどまらない恒久的な対策の重要性を改めて示しています。

フランスの産業構造もCO2排出量減少に寄与しています。例えば、フランスは製造業の比重が比較的低く、サービス産業が経済を牽引しています。サービス業は一般に製造業と比較してエネルギー消費量や温室効果ガス排出量が少ないため、この構造が排出量の抑制に働いていると考えられます。また、フランスでは原子力発電が電力供給の大部分を占めており、約70%が原子力エネルギーに依存しています。原子力はCO2を直接排出しないため、化石燃料の使用削減に大きく貢献しています。これにより、フランスは中国やアメリカのように化石燃料依存が強い国と比べ、比較的低い排出量を維持しています。

一方で、課題も残されています。交通部門や住宅部門のエネルギー効率向上が急務であり、内燃機関を使用する自動車の減少や、電力のさらなるクリーン化が必要です。ドイツが進めている再生可能エネルギーへの転換や、ノルウェーがリードする電気自動車の普及の例を参考に、フランスもこれらの分野での政策的支援を強化するべきでしょう。

さらに、地政学的なリスクとして、ヨーロッパにおけるエネルギーの供給問題も考慮する必要があります。ロシアとウクライナの衝突などに伴うエネルギー安全保障の問題は、フランスのエネルギー政策にも大きく影響を及ぼします。フランスは原子力発電を主体とするエネルギー政策の安定性を武器に、他のヨーロッパ諸国とのエネルギー協力を強化することが今後の戦略的課題となるでしょう。

最終的に、フランスが持続可能な地球社会の一員としてCO2排出削減の成功を継続していくためには、次のような具体的対策が求められます。まず、再生可能エネルギーのさらなる拡大とバランスの取れたエネルギーミックスの形成が重要です。加えて、グリーン技術への研究開発投資を強化し、より効率的で電力消費が少ない商品や建築基準の普及を促進する必要があります。市民一人ひとりの行動を変えるためには、広範な教育キャンペーンやインセンティブを活用して、脱炭素ライフスタイルを推進する努力も重要です。

フランスのCO2排出量減少の歴史は、政策、技術、社会意識の融合によって可能であったといえます。この成功例を他国と共有するとともに、新たな挑戦に向けた包括的な行動をとることが、今後の持続可能な発展に向けて欠かせないでしょう。