国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年11月に更新したデータによると、チリのCO2排出量は1990年の約5,894万トンから2020年には約1億1,200万トンへと大幅に増加しました。特に2000年代以降、排出量は急激に伸びましたが、2020年には約1,120万トンの減少が見られます。これは、新型コロナウイルス感染症の世界的流行とそれによる経済活動の停滞が一因とされています。
「チリ」のCO2排出量推移
年度 | CO2排出量 |
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2020年 | 112,000,402トン |
2019年 | 120,688,685トン |
2018年 | 119,939,842トン |
2017年 | 118,264,476トン |
2016年 | 117,928,302トン |
2015年 | 115,013,410トン |
2014年 | 111,362,039トン |
2013年 | 116,376,488トン |
2012年 | 115,353,016トン |
2011年 | 112,584,133トン |
2010年 | 104,683,401トン |
2009年 | 101,223,383トン |
2008年 | 107,302,285トン |
2007年 | 105,899,147トン |
2006年 | 98,638,621トン |
2005年 | 95,662,856トン |
2004年 | 94,530,426トン |
2003年 | 89,583,999トン |
2002年 | 88,793,437トン |
2001年 | 86,595,729トン |
2000年 | 91,977,693トン |
1999年 | 94,041,760トン |
1998年 | 88,629,730トン |
1997年 | 87,399,494トン |
1996年 | 79,282,270トン |
1995年 | 71,624,538トン |
1994年 | 65,980,397トン |
1993年 | 61,797,344トン |
1992年 | 59,172,484トン |
1991年 | 56,999,090トン |
1990年 | 58,946,393トン |
チリにおけるCO2排出量の推移は、その経済成長や産業構造の変化を反映しています。1990年から2020年の約30年間で、総排出量は2倍近くに増加しており、これは同国の経済発展やエネルギー需要の拡大と密接に関連しています。1990年代から2000年代初頭までは、工業化の加速とそれに伴うエネルギー利用の増加によりCO2排出量が顕著に増えています。この時期、再生可能エネルギーへの移行や効率化が進んでいなかったことが、化石燃料の使用に依存した結果として顕れています。
2001年から2003年にかけての一時的な減少は、エネルギー価格の上昇や経済状況の影響が排出量に影響を及ぼしたと考えられます。その後の期間では、排出量が再び増加傾向を示し、2010年代には年ごとに安定した上昇を記録しました。この背景には、経済規模が拡大する中で特にエネルギー集約型産業の活動が活発化したことが挙げられます。
一方、2020年に見られる排出量の大幅な減少は、世界的に新型コロナウイルス感染症が社会・経済活動に及ぼした影響が主な要因です。この時期には工業生産と交通の縮小が進み、多くの国でエネルギー消費が低下しました。これにより、チリにおいても同様の現象が起きたと見られます。
チリは地理的に見ると再生可能エネルギー導入に適した条件が整っている国の一つです。例えば、同国北部には太陽光発電に最適なアタカマ砂漠が広がり、風力発電のポテンシャルも高いと評価されています。それにも関わらず、CO2排出量が増加し続けてきた背景には、電力供給において従来型の化石燃料、特に石炭と石油への依存が挙げられます。
国際的に見ても、チリは再生可能エネルギーへの投資増加が期待されています。例えば、アメリカやドイツ、フランスなどでは、同様の状況下で再生可能エネルギーがエネルギー供給全体の相当な部分を占めるようになりました。これに対し、チリでも再生可能エネルギーの更なる普及のため、設備投資や法的枠組みの整備が必要です。
現在の課題として挙げられるのは、都市部の排出と、輸出関連産業のエネルギー消費です。特に、鉱業(銅の生産など)はチリ経済の中核ですが、大量のエネルギーを消費しています。この分野で脱炭素化を推進することは、同国の全体的なCO2排出削減の鍵となります。また、都市交通の効率化や電化、公共交通機関へのシフトなども重要な対策として挙げられ、さらなる施策の導入が求められます。
将来に向け、適切な政策を実施することが不可欠です。一例として、炭素税を導入して高排出産業にインセンティブを与えたり、グリーン水素プロジェクトを拡大することで、民間部門の脱炭素化を促進することが考えられます。また、教育や地方自治体への支援を通じて、再生可能エネルギーへの移行を地域社会レベルでも推進することは中長期的な成果をもたらすでしょう。
チリは排出削減目標を掲げ、国際的に責任を果たそうとしていますが、その達成には今後も大きな努力が必要です。今後は、再生可能エネルギーの活用促進や炭素集約型産業の構造転換に加え、地域間での協力や世界的な技術交換を通じ、地球温暖化の抑制に寄与する動きが期待されます。これによって、同国のみならず、各国の持続可能な未来にもつながる重要な役割をチリが果たすことでしょう。