Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、カナダのCO2排出量は1990年の約6億500万トンから2020年の約7億2,200万トンへと長期的な増加傾向を示しつつ、近年は特に2020年に減少しています。ピークは2018年の約8億トンであり、2020年には新型コロナウイルス感染症の影響による経済活動の停滞が排出削減に寄与しましたが、それ以降の推移が持続可能な形で削減に向かうかは課題として残されています。
「カナダ」のCO2排出量推移
年度 | CO2排出量 |
---|---|
2020年 | 721,566,139トン |
2019年 | 796,914,966トン |
2018年 | 803,973,379トン |
2017年 | 789,762,149トン |
2016年 | 769,321,776トン |
2015年 | 773,437,961トン |
2014年 | 762,333,833トン |
2013年 | 739,757,119トン |
2012年 | 731,499,512トン |
2011年 | 725,629,043トン |
2010年 | 723,841,764トン |
2009年 | 727,974,964トン |
2008年 | 763,527,389トン |
2007年 | 782,057,603トン |
2006年 | 778,979,969トン |
2005年 | 769,918,150トン |
2004年 | 759,840,962トン |
2003年 | 756,027,173トン |
2002年 | 721,573,116トン |
2001年 | 725,723,008トン |
2000年 | 732,954,884トン |
1999年 | 712,077,870トン |
1998年 | 703,613,638トン |
1997年 | 692,393,049トン |
1996年 | 676,569,056トン |
1995年 | 658,703,810トン |
1994年 | 640,777,392トン |
1993年 | 624,787,459トン |
1992年 | 615,537,411トン |
1991年 | 598,332,541トン |
1990年 | 605,019,273トン |
カナダのCO2排出量推移を観察すると、1990年の約6億500万トンから2005年まで一貫して増加を続け、その後も高い水準で推移しています。この増加傾向は、人口増加や都市化、経済成長によるエネルギー需要の拡大、および特定産業の発展、特にエネルギー輸出国としての石油・ガス分野での活動が要因となっています。2018年にはピークの約8億トンに達し、特に2010年代にかけての排出量の上昇は、カナダ国内の温室効果ガス削減目標を達成する上で大きな課題を示しています。
一方、2020年の排出量は約7億2,200万トンと、2019年から約9.5%減少しました。この大幅な改善は、新型コロナウイルス感染症の大流行による経済活動の停滞、産業活動の鈍化、交通量の減少によるものと考えられます。しかし、このような特殊な状況による減少は、持続可能な削減の起点ではなく一時的な現象と理解する必要があります。
世界各国との比較として、同様に石油やガス産業が経済を支えるアメリカもピーク時には50億トン以上のCO2を排出しており、カナダの数値は規模として小さいものの、一人当たりの排出量では常に上位を占めています。一方、ヨーロッパ諸国、例えばドイツやイギリスは国を挙げたイノベーション投資や再生可能エネルギーへの転換によって、過去数十年の間に排出量を着実に減少させています。これらの事例は、カナダにとって効果的な政策実践の参考例となります。
地政学的に見ると、カナダは石油や天然ガスの主要輸出国であり、それが国の経済を支える一方で、持続可能性の観点から化石燃料への依存をどのように克服するかが長期的な課題です。また、新興国や中国、インドの急成長に対する競争力強化のプレッシャーも、産業構造の転換に影響する要因です。さらに、異常気象や自然災害といった環境リスクが直接的なインパクトを与える可能性も無視できません。
今後の課題としては、再生可能エネルギーの普及促進やエネルギー効率化技術の開発、国際的な連携による炭素排出削減努力の強化が挙げられます。具体的には、政府主導で電気自動車の利用推進政策を強化し、産業界にはカーボンプライシング(炭素税と排出取引市場)などの取り組みを進めることが求められます。また、森林伐採の防止と植林活動によるカーボンシンクの拡大など、自然を活用した対策も必要となります。
結論として、カナダのCO2排出量削減には、化石燃料エネルギーの供給国としての地位をいかに維持しながらも、環境負荷を軽減する経済移行が鍵となります。これには技術革新と政策的意思が欠かせません。国内外の提携を通じて未来に向けた持続可能な成長戦略を構築することで、カナダは国際社会において良い模範を示す可能性を持っています。