FAOが発表したグアテマラの小麦生産量データによると、1961年の24,656トンから1984年のピーク時には90,700トンに達しましたが、その後は急激に減少し、2022年には254トンとほぼ皆無に近い水準となっています。この減少は特に1990年代から顕著で、2000年代以降に極端な低水準へと推移しています。
グアテマラの小麦生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 254 |
2021年 | 254 |
2020年 | 31 |
2019年 | 164 |
2018年 | 464 |
2017年 | 638 |
2016年 | 744 |
2015年 | 594 |
2014年 | 1,674 |
2013年 | 1,556 |
2012年 | 1,515 |
2011年 | 1,433 |
2010年 | 1,438 |
2009年 | 1,547 |
2008年 | 1,846 |
2007年 | 1,864 |
2006年 | 1,588 |
2005年 | 2,976 |
2004年 | 4,232 |
2003年 | 2,830 |
2002年 | 2,676 |
2001年 | 6,214 |
2000年 | 9,525 |
1999年 | 8,246 |
1998年 | 14,633 |
1997年 | 23,000 |
1996年 | 23,690 |
1995年 | 26,003 |
1994年 | 26,004 |
1993年 | 24,267 |
1992年 | 22,680 |
1991年 | 22,680 |
1990年 | 32,033 |
1989年 | 44,225 |
1988年 | 49,895 |
1987年 | 45,418 |
1986年 | 52,744 |
1985年 | 53,800 |
1984年 | 90,700 |
1983年 | 69,600 |
1982年 | 48,600 |
1981年 | 55,300 |
1980年 | 58,128 |
1979年 | 56,764 |
1978年 | 59,616 |
1977年 | 55,752 |
1976年 | 47,864 |
1975年 | 45,382 |
1974年 | 51,106 |
1973年 | 47,104 |
1972年 | 46,715 |
1971年 | 38,031 |
1970年 | 36,025 |
1969年 | 31,208 |
1968年 | 33,140 |
1967年 | 31,555 |
1966年 | 29,642 |
1965年 | 27,164 |
1964年 | 36,100 |
1963年 | 35,609 |
1962年 | 32,079 |
1961年 | 24,656 |
グアテマラの小麦生産量推移を振り返ると、1960年代から1980年代にかけて増加傾向が見られました。1961年の24,656トンから始まり、1970年代後半から1980年代初頭には5万~9万トン規模の生産が安定しており、農業生産において一定の存在感を示していました。しかし、1985年以降まさに劇的な減少が始まり、1990年には32,033トン、さらに2000年代には1万トンを下回り、2010年代中頃には年間生産量が数百トン、そして2020年代にはほぼゼロに近づいています。
このように小麦生産が急減した背景には、複数の要因が絡み合っています。まず、地形と気候が小麦栽培に適さなくなってきた点が挙げられます。グアテマラは主にコーヒーやバナナといった熱帯産品の生産が盛んな国であり、特に標高の低い地域では小麦の生育に必要な寒冷な気候が得られません。そのため、世界市場で小麦の競争力を保つのが困難になったと考えられます。
経済的な観点から言えば、農業の多様化と輸出指向の政策も影響を及ぼしています。グアテマラでは小麦栽培よりも利益率の高いトウモロコシやコーヒーの農地転用が進み、輸入に頼る形で小麦需要を満たす傾向が強まりました。特に1990年代以降の自由貿易化の進展に伴い、低コストで高品質の小麦をアメリカやカナダなどから輸入する方が経済的効率が良いと判断されるようになりました。
加えて、地政学的リスクと自然災害が生産量の低下を加速させる要因となりました。内戦や政治的不安定が農業基盤の整備を後回しにさせ、さらにはエルニーニョ現象などによる気象異常が頻発し、農作物全般の生産安定性が大きく損なわれています。新型コロナウイルスのパンデミックも小麦栽培には間接的に影響を与え、労働力や輸送の制限がさらなる困難をもたらしました。
こうした背景状況において、グアテマラが今後小麦生産を再び増加させることは非常にハードルが高いと言えます。しかし、小麦生産の再興が現実的でないとしても、その衰退に関連する課題に対処する策を検討することは重要です。長期的な食料安全保障を確保するために、輸入小麦に依存する構造を分散させる必要があります。具体的には、トウモロコシやアマランサスなど、グアテマラの土壌や気候に適応した作物の生産力を強化するとともに、地域間協力を通じて中央アメリカ全体の食料調達網を構築することを目指すべきです。
また、地元農民への技術移転や持続可能な農業への助成金の導入を通じて、小麦に代わる作物の栽培を支援することが考えられます。さらに、輸入小麦の価格高騰リスクに対応するために、戦略的な備蓄制度を構築することや、地域の災害対策を強化することも課題の一部です。
結論として、グアテマラの過去半世紀にわたる小麦生産量の大幅な減少は、農業条件、経済政策、国際市場の変化、そして自然災害や政治的不安定といった複合的な要因が影響を及ぼしていることが伺えます。この傾向を踏まえ今後、国内農業の再構築とともに、食料安定を図るための国際的な連携や政策的サポートが求められます。