ITU(国際電気通信連合)が発表したデータによれば、サウジアラビアにおける人口100人当たりの携帯電話の契約数は、1990年には約0.09と非常に低い水準でしたが、1996年以降急速に増加し、ピークである2011年に179.1に達しました。その後減少傾向に転じましたが、2022年には132.38となり、再び増加を見せています。このような推移は、テクノロジーの普及、政策の変化、および市場需要の変動によるものと考えられます。
サウジアラビアの100人当たりの携帯電話の契約数推移
年度 | 100人当たりの携帯電話の契約数 |
---|---|
1990年 | 0.092 |
1991年 | 0.092 |
1992年 | 0.091 |
1993年 | 0.089 |
1994年 | 0.086 |
1995年 | 0.084 |
1996年 | 0.982 |
1997年 | 1.665 |
1998年 | 3.064 |
1999年 | 3.982 |
2000年 | 6.385 |
2001年 | 11.449 |
2002年 | 22.136 |
2003年 | 31.265 |
2004年 | 38.778 |
2005年 | 58.055 |
2006年 | 77.611 |
2007年 | 107.575 |
2008年 | 131.208 |
2009年 | 157.508 |
2010年 | 175.318 |
2011年 | 179.099 |
2012年 | 171.958 |
2013年 | 168.678 |
2014年 | 164.153 |
2015年 | 161.21 |
2016年 | 143.441 |
2017年 | 117.6 |
2018年 | 117.969 |
2019年 | 115.271 |
2020年 | 120.053 |
2021年 | 126.361 |
2022年 | 132.38 |
サウジアラビアの携帯電話契約数の推移は、技術的革新と経済的発展が住民の生活に与える影響をよく表しています。1990年代初頭の0.09という低い契約率は、当時の通信インフラが未成熟であり、携帯電話そのものが高価で限られた一部の人々の間でしか普及していなかったことを反映しています。しかし、1996年を境に契約率が急激に増加を始め、2007年には100人当たりの契約数が100を超えました。これには、通信技術の進歩、携帯電話の価格低下、および政府主導の通信ネットワーク整備が大きく寄与しています。
特に2000年代後半には、スマートフォンやモバイルインターネットの登場により、携帯電話の需要が急速に拡大したことが背景にあります。また、生活水準の向上や都市化の進展により、携帯電話は単なる通信手段から、日常生活の不可欠なツールへと変化しました。この頃サウジアラビアは多数の外国人労働者を受け入れており、これも契約数を押し上げる要因となりました。
なかでも、2011年の179.1という契約数ピークは驚異的で、サウジアラビア人1人あたり1台以上の携帯電話を持つ状況を示しています。これはビジネス利用や、個人用と仕事用の複数契約が一般的になったことを示唆しています。しかし、その後は契約数が減少傾向となり、2016年には143.44、2017年には117.60と大きく落ち込みました。この減少は、一部では市場が成熟期に達したこと、また一部ではデータ通信の普及により、複数契約を見直す利用者が増えたことが要因とされています。
さらに直近の数値を見ると、2019年の115.27から2022年の132.38にかけて再び増加の兆しが見られます。これには、5Gの導入や通信事業者による料金プランの多様化が影響を与えたと考えられます。特に、新型コロナウイルスの影響で多くの人々がリモートワークやデジタルコンテンツの利用を増やしたことが契約数を押し上げた一因となったと推測されます。
サウジアラビアのこのような携帯電話市場の変動を他国と比較してみると、日本の2022年の携帯電話契約数は約137で、サウジアラビアとほぼ同水準です。一方で、経済規模の大きいアメリカ(100人当たり約130)や、中国(約120)もこれに近い値を示します。一方、韓国のようなモバイル技術の先進国では、約140-150とやや高い水準を保っています。これらの数字と比べると、サウジアラビアの契約率は国際的な平均と比肩する水準にあります。
今後の課題として、特にスマートフォンの利用が広範囲に普及している一方で、農村地域や経済的な理由から十分な利用が難しい層の存在が指摘されています。このような「デジタル格差」を解消するためには、通信インフラのさらなる拡充と、価格競争を活性化させる政策が必要です。また、セキュリティリスクへの対策も重要です。携帯電話の普及に伴い、サイバー攻撃や詐欺のリスクが増加しているため、政府と通信事業者が連携してこれらの対策を講じることが求められます。
さらに、地域間の地政学的リスクも無視できません。中東地域は地理的に国際的なエネルギー供給の中心であり、通信インフラの脆弱性が国際的なサイバーリスクに波及する可能性があります。したがって、通信の分野における地域間協力の枠組みを強化し、安全で強固なネットワーク構築を推進することが未来の安定成長に繋がるでしょう。
結論として、サウジアラビアの人口100人当たりの携帯電話契約数の推移は、国内外の社会経済的変動や技術進歩を背景にした変化を明確に示しています。このデータを活用し、デジタル格差の解消、安全性の向上、そしてインフラの発展を促進することが、今後の持続可能な成長にとって不可欠です。政府と通信業界が協力してこれらの目標を達成することが、サウジアラビアの経済と社会のさらなる発展に直接的に寄与するでしょう。