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空や光の不思議を科学で読み解く!|不思議な自然現象10選【その2】

空や光の不思議を科学で読み解く!|不思議な自然現象10選【その2】
空や光の不思議を科学で読み解く!|不思議な自然現象10選【その2】

空の色、光の現象、夜空のきらめき──自然界のふしぎには、まだまだ「なんで?」があふれています。前回に続き、空や光にまつわる科学の疑問を5つ紹介。雲の白さ、蜃気楼、星の瞬き、赤い月、流れ星まで、日常で見上げる空の裏側にある不思議をやさしく解き明かします。知れば世界の見え方が変わる、そんな発見の旅へご案内します。

雲が白く見えるのはなぜ?

光がまんべんなく散らばるから

 雲が白く見えるのは、太陽光が雲を構成する水滴や氷の粒にぶつかり、あらゆる方向に均等に散乱されるためです。このとき働くのが「ミー散乱」と呼ばれる現象です。

 ミー散乱(光の散らばり)は、粒子の大きさが光の波長と同程度かそれ以上の場合に生じます。雲の水滴は平均で10〜50 µm(マイクロメートル)の大きさがあり、可視光(0.4〜0.7 µm)の波長よりも約20〜100倍も大きいため、波長による散乱の差が小さくなります。

 その結果、赤や紫といった色の光が特定の方向に偏ることなく、すべての色が均等に混ざった状態で散乱され、私たちの目には雲が白く見えるのです。

黒く見えるのは光を通さないから

 一方で、分厚く発達した雲や雨雲は、内部で光が何度も吸収・散乱され、地上に届く光が少なくなります。そのため、灰色や黒く見えることがあります。これは光を通しにくい状態=空が暗くなる予兆としても知られています。

【豆知識】雲の色で天気が読める?

 昔から「黒い雲は雨の前触れ」と言われるように、雲の色は天気の変化を知らせるサインにもなります。白くモコモコした雲(綿雲/積雲)は晴天の象徴ですが、黒く広がる雲は雷雨や寒冷前線の通過を示すこともあります。空の色に注目することで、自然の変化に気づくきっかけになります。

蜃気楼はどうして見えるの?

光の屈折が見せる幻想

 蜃気楼(しんきろう)は、空気の温度差によって屈折した光が、実際とは違う位置から届くことで、物体が浮いたり、反転して見える現象です。熱い地面の上に冷たい空気がある場合、下からの熱気で空気が揺らぎ、光が曲がることで、遠くの風景が水たまりのように揺れて見えます。

上位と下位、2種類の蜃気楼

 蜃気楼には、「下位蜃気楼」と「上位蜃気楼」の2種類があります。下位蜃気楼は、炎天下の道路や砂漠などで地表が熱せられたときに発生し、物体が下に伸びて見えます。一方、上位蜃気楼は寒冷地で発生し、遠くの船や建物が浮かんで見えることもあります。

【豆知識】「蜃(しん)」とは何のこと?

 「蜃気楼」の「蜃」とは、古代中国で“海に住む想像上の巨大な大蛤(巨大な貝)”を意味する言葉です。この大蛤が吐く息で幻を見せると信じられており、そこから「蜃気楼」という名前がついたとされています。また、蜃は単なる貝ではなく、竜の一種とする説もあり、角や赤いひげを持つ神秘的な生物として描かれることもあります。

 現代では、大蛤は一般的なハマグリの一種として認識されており、食材としても利用されています。特に日本では、婚礼や祝い膳に使われることが多く、縁起の良い貝とされています。

星が瞬いて見えるのはなぜ?

大気のゆらぎが光を揺らす

 星が夜空で「キラキラ」と瞬いて見えるのは、大気の温度差や気流の影響で、星の光が地球に届く途中で何度も屈折し、方向が微妙に変化するからです。この現象は「大気の屈折ゆらぎ」と呼ばれ、光の進むルートが常に揺れ動くことで、星の明るさや位置が変わって見えるのです。

惑星はなぜ安定して見える?

 星は点のような光として見えるため、わずかな屈折でも大きな変化に見えます。一方、惑星は見かけ上のサイズが大きく、光が平均化されて届くため、比較的安定して輝いて見えるのです。望遠鏡で観察すると、この差がよりはっきりとわかります。

【豆知識】星の瞬きで天気が読める?

 昔の航海士たちは、星の瞬き方から天候の変化を予測していました。特に激しく瞬く夜は、大気が不安定で、翌日に天気が崩れる兆しとされていたのです。

月が赤く見えることがあるのはなぜ?

皆既月食と大気散乱の関係

 満月が赤銅色に見える現象は「皆既月食」と呼ばれ、地球が太陽と月の間に入り、月が地球の影に完全に入ることで起こります。しかし完全に暗くはならず、地球の大気を通過した赤い光だけが月に届き、赤く見えるのです。これは、夕焼けと同じ「レイリー散乱」の影響です。

地平線近くの月も赤く見える

 月が低い位置にあるときに赤く見えるのも、大気中を通過する距離が長くなるためです。青や緑の光が散乱され、赤い光が残って私たちの目に届きます。湿度やちりの量によって、見える赤さは日によって異なります。

【豆知識】「赤い月」は不吉の象徴だった?

 中世ヨーロッパでは、赤く染まった月は戦争や災厄の前兆とされ、不吉の象徴とされていました。現代では、科学的にその理由が明らかになっていますが、神秘的な美しさには変わりありません。

流れ星はなぜ光るの?

空気の圧縮で加熱され、発光する

 流れ星は、宇宙から地球に飛び込んできた微小な岩石や塵(流星物質)が、夜空を横切るように光る現象です。一般的には「摩擦で光る」と説明されることがありますが、厳密には摩擦熱そのものではなく、空気の圧縮による加熱が主な原因です。

 流星物質は秒速数十キロという非常に高い速度で大気に突入します。このとき、物体の前方にある空気が急激に押しつぶされ、断熱圧縮によって数千度以上の高温になります。その高温の空気が、流星物質の表面を加熱・蒸発させ、さらにイオン化(プラズマ化)を引き起こし、明るく光り輝くのです。

 私たちが夜空で見る「光の筋」は、このプラズマが発する強い光であり、物体そのものが燃えているというよりは加熱された周囲の空気が光っている現象だといえます。

刹那の輝きとその秘密

 流れ星の光は一瞬で消えてしまいますが、その一瞬の美しさが多くの人の心を引きつけます。ときには非常に明るく、長く光る「火球(かきゅう)」と呼ばれる流星もあり、稀に音(ソニックブーム、電磁波音)や振動を伴うこともあります。火球の一部が地表に到達すると、それは「隕石」として扱われ、科学的にも貴重な資料となります。

【豆知識】流星群の観察はいつがベスト?

 流星はいつでも観察できますが、毎年決まった時期に出現数が増える「流星群」が観測の好機です。代表的なものには、8月のペルセウス座流星群(8月12〜13日頃がピーク)、12月のふたご座流星群(12月14日前後に極大を迎える)などがあります。観察の際は月明かりの少ない夜を選び、街明かりの届かない広い空の下に寝転んで眺めるのが最もおすすめの方法です。

まとめ:知ることで空はもっと面白くなる

 雲の色、蜃気楼、星の輝き、赤い月、流れ星──どれも日常でふと目にする現象ですが、その背景には驚くほど精緻な自然の法則が隠れています。科学的な視点を持つことで、見慣れた空がまったく新しい表情を見せてくれるはずです。次に空を見上げたとき、ほんの少しだけ立ち止まって「なぜ?」を思い出してみてください。

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