国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、エジプトのCO2排出量は1990年の約1億3760万トンから2020年の約3億2920万トンへと増加しています。全体的に右肩上がりの傾向を示しながら、2010年代半ば以降に停滞や一時的な減少が見られ、2020年においては新型コロナウイルス感染症の影響で顕著に減少しています。
「エジプト」のCO2排出量推移
年度 | CO2排出量 |
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2020年 | 329,226,297トン |
2019年 | 352,142,102トン |
2018年 | 352,274,346トン |
2017年 | 357,761,372トン |
2016年 | 336,910,776トン |
2015年 | 321,729,956トン |
2014年 | 326,755,290トン |
2013年 | 312,309,618トン |
2012年 | 313,665,814トン |
2011年 | 318,653,981トン |
2010年 | 303,647,799トン |
2009年 | 306,355,856トン |
2008年 | 300,018,828トン |
2007年 | 287,780,031トン |
2006年 | 276,300,734トン |
2005年 | 263,033,187トン |
2004年 | 239,232,238トン |
2003年 | 233,252,839トン |
2002年 | 210,761,062トン |
2001年 | 205,419,218トン |
2000年 | 219,462,572トン |
1999年 | 202,698,466トン |
1998年 | 196,157,904トン |
1997年 | 183,600,938トン |
1996年 | 169,727,731トン |
1995年 | 168,548,524トン |
1994年 | 154,841,857トン |
1993年 | 162,457,863トン |
1992年 | 148,659,588トン |
1991年 | 148,238,281トン |
1990年 | 137,608,828トン |
エジプトのCO2排出量の推移を1990年から見てみると、その背景には経済成長や産業拡大、エネルギー需要の増加が深く関わっています。特に1990年代から2000年代前半にかけて、エジプト経済はエネルギーを基盤とした工業化を進め、大規模なインフラ開発が行われました。この結果、排出量が2000年の約2億1946万トンまで着実に増加しています。
2000年代半ばから2020年にかけても増加が続き、2060年を見据えた人口増加予測や都市化によりエネルギー消費の増加が続くと考えられます。しかし、データ上では2010年代半ばに入ると、排出量の増加ペースが緩やかになったり、特定の年度で減少する動きが観察されます。この理由として、再生可能エネルギーの推進や経済改革に向けた政府の取り組み、またエネルギー効率の改善が考慮されています。
2020年の大幅なCO2排出量の低下は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、経済活動が縮小した影響が大きいと考えられます。輸送、製造業、建設業など主要部門の稼働率が一時的に低下したことが減少の要因とされています。これはエジプトだけでなく世界的な傾向であり、アメリカや中国、日本、インドといった主要排出国でも同様の動きが見られました。
しかしながら、2020年の特殊要因による減少を例外的なケースとしてみると、エジプトのCO2排出量削減に向けた長期的な課題は依然として大きいと言えます。同国は第2次産業(製造業)や第3次産業(サービス業)に依存する経済構造を持ちながらも、依然として化石燃料に大きく依存したエネルギー供給が主流です。また、都市化の進展により、エネルギー需要がさらに増加することが予想されるため、エネルギー政策の転換がますます重要になるでしょう。
現在、エジプトは再生可能エネルギー開発に力を入れており、特に太陽光や風力発電施設の拡大を目指しています。これに加えて、国際的な枠組みであるパリ協定の目標を達成するため、廃棄物管理や公共交通インフラの充実、企業や家庭への省エネルギー技術の導入を推進する必要があります。例えば、電動車両の導入を進め、自動車部門のCO2排出を減少させることも有効な手段です。
地政学的には、エジプトの地理的位置は戦略的に非常に重要であり、スエズ運河を通じた物流や貿易活動が世界的なCO2排出に影響を与えています。この点において、環境対策と経済成長を結びつけ、国際的な協力を得ながら、「経済的に持続可能かつ環境に配慮した開発」を実現する必要があります。また、近年気候変動によりナイル川の水資源が影響を受け、農業やエネルギー生産に負担を与えているため、これを補完する形での新技術への投資も課題の一つです。
全体として、エジプトのCO2排出量は、産業化や都市化が進む中で自然な結果といえますが、同時に再生可能エネルギーの利用拡大や持続可能な産業の推進が急務です。国際社会との連携を深め、地域の特性を考慮しながら長期的な削減目標を設定し、実行することが必要です。そのためには再エネ分野へのさらなる投資、省エネ施策、そして持続可能な開発を主軸とした政策立案が、エジプトが未来の地球環境に貢献するための鍵となるでしょう。