Food and Agriculture Organizationが発表した2024年のデータによると、サウジアラビアのCO2排出量は、1990年以降増減を繰り返しながらも、長期的には増加傾向が続いています。1990年の約2.67億トンから2020年の約7.52億トンまでおよそ3倍弱に増加しました。特に2000年代以降の急増が顕著で、2015年の約8.26億トンをピークとして、近年はやや減少傾向にあるものの依然として高水準にあります。
「サウジアラビア」のCO2排出量推移
年度 | CO2排出量 |
---|---|
2020年 | 752,048,606トン |
2019年 | 756,351,491トン |
2018年 | 768,011,107トン |
2017年 | 769,431,201トン |
2016年 | 750,427,333トン |
2015年 | 825,977,868トン |
2014年 | 778,051,308トン |
2013年 | 711,932,247トン |
2012年 | 732,301,711トン |
2011年 | 661,069,700トン |
2010年 | 666,867,123トン |
2009年 | 603,817,023トン |
2008年 | 571,417,150トン |
2007年 | 520,017,048トン |
2006年 | 560,950,229トン |
2005年 | 522,034,984トン |
2004年 | 510,845,850トン |
2003年 | 437,959,755トン |
2002年 | 427,437,436トン |
2001年 | 396,738,154トン |
2000年 | 390,267,319トン |
1999年 | 310,113,267トン |
1998年 | 297,924,713トン |
1997年 | 304,285,044トン |
1996年 | 344,150,225トン |
1995年 | 317,770,416トン |
1994年 | 394,985,372トン |
1993年 | 417,689,428トン |
1992年 | 388,368,461トン |
1991年 | 369,452,117トン |
1990年 | 267,017,468トン |
サウジアラビアのCO2排出量は、1990年から2020年にかけて長期的に増加しており、この背景にはいくつかの重要な要因があります。同国は世界有数の石油輸出国であり、その経済の多くを石油産業に依存しています。石油の採掘、精製、輸出に伴うエネルギー需要の増加が、CO2排出量の増加をもたらしていると考えられます。また、国内の経済発展や都市化の進展、人口増加もエネルギー消費を押し上げる要因となっています。
1990年から2000年の間では、CO2排出量が増減を繰り返しましたが、2000年代以降、特に2004年から2014年の間には、排出量が急激に増加しています。この期間には、石油価格の上昇や国内の急成長する工業部門の拡大が見られました。しかし2015年をピークに一部減少傾向も確認され、2020年には752,048,606トンまで減少しています。この近年の減少には、石油価格の低迷やエネルギー効率向上への取り組みが影響している可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症の世界的流行による経済活動の停滞も一時的にCO2排出量の低下を引き起こしたと考えられます。
課題としては、依然として石油産業への依存度が高い経済構造の転換が挙げられます。サウジアラビアは「ビジョン2030」という国家戦略のもと、エネルギー供給源の多様化や再生可能エネルギーの導入に注力していますが、この転換には依然として課題が多いと考えられます。たとえば、太陽光発電や風力発電の設置技術は進歩しているものの、全体のエネルギー供給に占める割合はまだ低いです。また、産業分野におけるエネルギー効率の向上や建築物の省エネルギー化も、持続可能な長期戦略の一部として積極的に推進する必要があります。
他国との比較では、サウジアラビアのCO2排出量は世界的には中位から上位に位置します。しかし累積排出量を見ると、中国やアメリカのような大規模排出国と比べるとやや劣るものの、日本やドイツよりは高い水準に達しています。同国の一人あたり排出量も高く、これは石油生産国としての特殊事情を反映していると考えられます。
地政学的背景を考慮すると、サウジアラビアの石油生産は中東地域の他国とも密接に関わっており、カーボンニュートラルを目指す国際的なプレッシャーの中で、産油国同士の競争や協調がCO2排出量にも影響を及ぼす可能性があります。資源争奪やエネルギー政策の軋轢が地域的な衝突を誘発するリスクも無視できません。
今後の対策として具体的には、再生可能エネルギーへのシフトを加速させるだけでなく、エネルギー輸出に依存しない産業ライフサイクルの転換が重要です。また、炭素捕獲技術(CCS)の導入や国際的資金援助を活用したクリーンエネルギープロジェクトの推進も必要です。さらに、国際協力の枠組みを利用し、他国の成功例を参考にすることが同国にとって有益でしょう。例えばドイツでは再生可能エネルギーの割合を高めることでCO2削減目標を達成しており、こうした取り組みをモデルにすることも有効です。
結論として、サウジアラビアのCO2排出量の推移は経済成長や地域の地政学的要因と密接に関連しています。中長期的には、石油依存からの脱却と、持続可能なエネルギー政策への移行が同国の最大の課題です。この目標を達成するためには、国際社会との連携と国内の包括的なエネルギー改革の両立が必要です。それにより、経済的安定と環境両面のバランスを図ることが期待されます。