Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、ブータンのCO2排出量は、1990年の1,095,018トンから2020年の3,154,581トンへと約2.9倍に増加しました。この期間において、1990年代の緩やかな増加に比べ、2000年以降に急激な伸びを見せ、特に2015年以降の上昇傾向が顕著です。
「ブータン」のCO2排出量推移
年度 | CO2排出量 |
---|---|
2020年 | 3,154,581トン |
2019年 | 3,098,727トン |
2018年 | 2,924,468トン |
2017年 | 2,924,102トン |
2016年 | 2,770,995トン |
2015年 | 2,577,604トン |
2014年 | 2,497,087トン |
2013年 | 2,429,020トン |
2012年 | 2,340,878トン |
2011年 | 2,283,585トン |
2010年 | 2,087,285トン |
2009年 | 1,964,332トン |
2008年 | 1,732,668トン |
2007年 | 1,753,029トン |
2006年 | 1,723,575トン |
2005年 | 1,734,308トン |
2004年 | 1,532,765トン |
2003年 | 1,595,274トン |
2002年 | 1,636,415トン |
2001年 | 1,569,357トン |
2000年 | 1,614,579トン |
1999年 | 1,647,996トン |
1998年 | 1,596,757トン |
1997年 | 1,595,731トン |
1996年 | 1,503,427トン |
1995年 | 1,423,872トン |
1994年 | 1,165,622トン |
1993年 | 1,097,325トン |
1992年 | 1,135,066トン |
1991年 | 1,125,511トン |
1990年 | 1,095,018トン |
ブータンは、環境に優しい政策を採用し、二酸化炭素(CO2)の排出量が他国に比べて低い水準にあることで知られています。しかしながら、提示されているデータによると、1990年から2020年にかけて、国内のCO2排出量は持続的に増加しており、特にここ数年でその上昇幅が広がっています。この増加の背景には、経済成長、産業活動の拡大、ならびに国内エネルギー需要の上昇が関わっていると考えられます。
1990年代のブータンでは、主に焼畑農業や林業などの伝統的な経済活動が主流であり、年間排出量は1,000,000トン台で推移していました。しかし、1995年以降、排出量が徐々に増加に転じ、2000年以降の産業発展とともに増加のペースが速まりました。2015年には2,577,604トンを記録し、それ以降も高い水準を維持したまま、2020年には3,154,581トンに到達しています。
ブータンのCO2排出量の増加は、個別の分野に原因を求めることができます。まず、輸送セクターやエネルギー供給セクターの拡大が挙げられます。これは、国内の経済的近代化が進む中で、化石燃料の利用が増加したためです。また、建設業や鉱業といったエネルギー集約型産業の発展も、CO2排出量を押し上げる要因となっています。
他方で、ブータンは森林面積が豊富であり、CO2の吸収能力(カーボンシンク)が世界的にも評価されています。ブータンは名実ともに「カーボンニュートラル国家」として知られており、この点で国際的にも模範的な存在です。しかし、経済成長に伴う排出量拡大がこのステータスを脅かす可能性があります。このため、現状を踏まえた慎重な政策設計が求められています。
今後の課題として、排出量を適切に管理しつつ、産業と経済の発展を両立させる必要があります。例えば、再生可能エネルギーの導入を促進することで、石油などの化石燃料の使用を抑えることが考えられます。具体的には、水力発電のさらなる拡大や太陽光エネルギーの利用が有効でしょう。これらはまた、近隣国であるインドや中国への電力輸出の強化にもつながり、地域の経済協力を促進します。また、林業管理をより強化し、植林プログラムを推進することで、カーボンシンク能力を高めることも可能です。
加えて、気候変動対応の国際協力にも積極的に参加し、持続可能な開発に向けた援助技術や国際的な資金援助を引き付けることが重要です。この取り組みの一環として、日本やドイツなどの技術先進国と連携し、新技術の導入を積極的に支援すれば、エネルギー効率の向上につながります。
データの示すように、ブータンはこれまでもCO2排出量の管理と経済成長の両立に努力してきました。ただし、今後の持続可能性を確保するためには、現状の排出量増加傾向を抑制しつつ、長期的な視野で環境政策を考える必要があります。これは、地域的な地政学的リスクや経済的不安定要因を軽減し、安定した地域の発展にも寄与するでしょう。
科学的なデータや国際的な政策提言を活用しながら、ブータンが直面する課題に対処することで、同国がさらなる発展と環境保護の両立を図ることが期待されます。国際社会も、このモデル国家への知識共有や技術提供を惜しまないことが不可欠です。