Food and Agriculture Organizationが提供した最新データによると、モロッコのCO2排出量は1990年の46,123,305トンから2020年の102,133,044トンへと約2倍に増加しています。特に2010年以降の増加ペースが顕著であり、2019年には過去最大となる107,318,865トンを記録しました。一方で、2020年には新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の停滞が影響し、排出量は若干減少しています。
「モロッコ」のCO2排出量推移
年度 | CO2排出量 |
---|---|
2020年 | 102,133,044トン |
2019年 | 107,318,865トン |
2018年 | 101,885,559トン |
2017年 | 99,708,070トン |
2016年 | 94,823,616トン |
2015年 | 95,580,151トン |
2014年 | 93,216,679トン |
2013年 | 92,133,445トン |
2012年 | 91,057,310トン |
2011年 | 88,841,209トン |
2010年 | 87,022,234トン |
2009年 | 82,804,114トン |
2008年 | 82,979,814トン |
2007年 | 80,200,670トン |
2006年 | 77,650,741トン |
2005年 | 75,092,083トン |
2004年 | 72,023,500トン |
2003年 | 65,047,535トン |
2002年 | 65,203,034トン |
2001年 | 64,205,896トン |
2000年 | 60,173,421トン |
1999年 | 58,414,846トン |
1998年 | 56,558,229トン |
1997年 | 55,314,847トン |
1996年 | 54,260,920トン |
1995年 | 52,292,623トン |
1994年 | 51,834,680トン |
1993年 | 49,352,586トン |
1992年 | 48,172,521トン |
1991年 | 47,544,042トン |
1990年 | 46,123,305トン |
モロッコのCO2排出量の推移を分析すると、持続的な増加傾向が見られます。1990年から2020年の30年間で、排出量はおよそ2倍に拡大しています。この増加は、主に産業の発展、エネルギー需要の増加、輸送・交通インフラの拡大に起因していると考えられます。特に2000年以降、モロッコでは工業化や都市化の加速が環境負荷の高まりを招いており、これがCO2排出量の増加の一因とされています。
2000年時点の60,173,421トンから2010年の87,022,234トンへの急激な増加は、モロッコ国内での経済成長が顕著であったことを反映しており、この間の平均増加率は各年約4.3%にも達しています。また、2018年に100,000,000トンの大台を突破し、2019年には最大の107,318,865トンを記録しましたが、これはエネルギー消費が石炭や石油などの化石燃料に依存していることが関係しています。都市部での電力需要の増加や、農業分野における新技術導入もエネルギー使用量を拡大している要因として挙げられます。
一方、2020年にはCO2排出量が102,133,044トンに減少しました。この減少はグローバルなパンデミックである新型コロナウイルスの影響により、モロッコ国内外の経済活動が停滞したことによるものです。運輸活動の制限や工業生産の一時停止、そして航空産業の縮小が直接的な影響を与えています。
モロッコの排出量の増加は、世界全体の中では中規模なレベルに位置します。しかし、中国やアメリカといった主要排出国と比較すると、モロッコの排出量は依然として少ない水準です。たとえば2019年、同年の中国のCO2排出量は約100億トン、アメリカは約50億トンであり、モロッコの107,318,865トンはこれら大国に比べてわずか1%以下です。ただし、地域的な状況を見ると、北アフリカ地域全体の環境負荷におけるモロッコの割合は高まっており、持続可能な社会の実現に向けた取り組みが急務となっています。
モロッコは近年、再生可能エネルギーの導入に積極的であり、特に世界最大規模の太陽光発電施設であるノール・ソーラープロジェクトが注目されています。このような再生可能エネルギーの利用をさらに拡大することで、化石燃料への依存度を削減し、CO2排出量の安定化を図ることが期待されています。また、農業部門や輸送部門における省エネルギー技術の導入や、電気自動車への切り替え促進も重要なテーマです。
モロッコが抱える課題として、基幹産業の転換をどのように実現するかが挙げられます。特に地政学的背景として、モロッコは資源の輸入依存度が比較的高い国であり、隣接するヨーロッパ市場への依存も顕著です。近隣地域での競争や紛争、資源価格の上昇リスクがモロッコのエネルギー政策に与える影響を考慮すると、持続可能なエネルギー政策の策定と実施が欠かせません。また、新型コロナウイルスの影響を契機として、経済活動のグリーンリカバリー(環境を考慮した経済回復)を推進する絶好の機会と捉えることができるでしょう。
結論として、モロッコは経済成長と環境負荷の両立を目指して、再生可能エネルギーの利用拡大、省エネルギー技術の導入、地域間協力の強化を進めるべきです。国際機関と連携し、脱炭素社会の実現に向けた具体的な政策を立案することが重要です。今後の政策次第では、モロッコは地中海地域における環境モデル国となり得る可能性を秘めています。