Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、マルタのCO2排出量は1990年から2020年の間に波動的な動きを示しています。特に2012年の3,219,802トンというピークのあと、2016年には1,924,881トンと顕著に減少しましたが、その後回復傾向を見せ、2020年には2,815,678トンを記録しています。
「マルタ」のCO2排出量推移
年度 | CO2排出量 |
---|---|
2020年 | 2,815,678トン |
2019年 | 2,832,972トン |
2018年 | 2,846,446トン |
2017年 | 2,147,425トン |
2016年 | 1,924,881トン |
2015年 | 2,209,841トン |
2014年 | 2,921,147トン |
2013年 | 2,904,915トン |
2012年 | 3,219,802トン |
2011年 | 3,100,788トン |
2010年 | 3,092,436トン |
2009年 | 2,986,689トン |
2008年 | 3,058,270トン |
2007年 | 3,201,213トン |
2006年 | 3,034,324トン |
2005年 | 3,127,478トン |
2004年 | 2,956,072トン |
2003年 | 2,949,652トン |
2002年 | 2,652,857トン |
2001年 | 2,829,249トン |
2000年 | 2,437,360トン |
1999年 | 2,664,383トン |
1998年 | 2,445,583トン |
1997年 | 2,744,135トン |
1996年 | 2,453,377トン |
1995年 | 2,499,523トン |
1994年 | 2,717,573トン |
1993年 | 3,005,728トン |
1992年 | 2,376,269トン |
1991年 | 2,391,838トン |
1990年 | 2,486,997トン |
マルタのCO2排出量は1990年に2,486,997トンであったところから、30年間にわたり増減を繰り返しています。この期間全体では、特に1993年以降、発電や交通、産業の発展に伴う排出量の微増傾向が見られました。しかしながら、2015年から2016年にかけて急激な減少が記録され、これは国内のエネルギー構造の転換や天然ガス利用への移行、さらには再生可能エネルギーの導入の影響と考えられます。
その背景には、マルタ政府がEU(欧州連合)の気候目標を達成するために行った政策的な取り組みがあります。例えば、発電所の効率改善や、太陽光をはじめとする再生可能エネルギーの推進が含まれます。2016年に記録された1,924,881トンという数値は、本データ期間中で最も低い値であり、政策の効力をはっきりと示しています。一方で2018年以降再び排出量が増加し、2020年には2,815,678トンに達しました。
この増加には、観光産業の再活性化、経済成長に伴うエネルギー消費の増加などが影響していると考えられます。マルタは地中海の中央に位置する島嶼国であり、観光業の占める経済的割合が高いことから、交通インフラや宿泊施設のエネルギー需要が二酸化炭素の増加に影響を与えることが多いです。また、他の先進国と比較すると、まだ再生可能エネルギーの割合は小さく、ここに改善の余地があります。
さらに、2020年には新型コロナウイルス感染拡大が社会全体に影響を及ぼしましたが、交通や産業活動の局所的な低下が見られたにもかかわらず、CO2排出量は前年と大きく変わりませんでした。このことは、構造的なエネルギー需要が根強いことを意味しています。
次なる課題として、マルタが2030年、さらには2050年に向けたEU全体の脱炭素目標を達成するためには、さらなる技術革新と政策の拡充が求められています。具体的には、電気自動車の普及促進、太陽光や風力エネルギーの使用拡大、そしてエネルギー効率の改善が重要です。また、地政学的なリスクとして、輸入燃料への依存度が高いマルタでは、エネルギーの安定供給が将来的な課題として挙げられます。これに対し、地域再生可能エネルギーの自給自足能力を強化することは、エネルギー安全保障の観点でも有用です。
さらに、観光業が持つ特有のエネルギー消費構造に対して、新しい持続可能な観光基準の策定や「グリーンハウス」政策の導入など、国際的な成功事例を参考にした計画が役立つでしょう。
これらの取り組みにより、マルタはエネルギー効率と再生可能エネルギー利用の高い国へと成長し、CO2排出量削減とエネルギー安全保障の両立を目指すことができます。このような取り組みは、EU全体のグリーン政策への貢献だけでなく、マルタ国民への利益としても大きな意義を持つでしょう。