FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、インドのCO2排出量は1990年から2019年まで一貫して増加傾向にありましたが、2020年には若干の減少が見られています。1990年には約14億トンであった排出量は、2019年には38億7千万トン以上に増加し、約2.6倍となっています。このデータは、インドの経済成長とエネルギー使用増加の関係性、そして2020年の新型コロナウイルスのパンデミックによる影響を反映しています。
「インド」のCO2排出量推移
年度 | CO2排出量 |
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2020年 | 3,696,639,580トン |
2019年 | 3,877,262,653トン |
2018年 | 3,830,962,659トン |
2017年 | 3,680,819,531トン |
2016年 | 3,588,020,389トン |
2015年 | 3,519,148,397トン |
2014年 | 3,415,889,547トン |
2013年 | 3,189,930,424トン |
2012年 | 3,186,664,917トン |
2011年 | 3,005,651,161トン |
2010年 | 2,877,633,462トン |
2009年 | 2,841,743,159トン |
2008年 | 2,658,393,767トン |
2007年 | 2,514,798,111トン |
2006年 | 2,383,471,867トン |
2005年 | 2,289,114,102トン |
2004年 | 2,204,017,838トン |
2003年 | 2,115,794,537トン |
2002年 | 2,039,628,104トン |
2001年 | 2,036,418,043トン |
2000年 | 2,022,116,540トン |
1999年 | 1,987,861,956トン |
1998年 | 1,918,094,191トン |
1997年 | 1,881,811,275トン |
1996年 | 1,832,907,734トン |
1995年 | 1,753,814,074トン |
1994年 | 1,689,015,108トン |
1993年 | 1,630,147,281トン |
1992年 | 1,598,043,508トン |
1991年 | 1,547,858,394トン |
1990年 | 1,490,782,731トン |
インドのCO2排出量推移は、同国の急速な経済発展と密接に関連しています。1990年代初頭、インドの排出量は年間14億トン前後でしたが、それ以降の工業発展やエネルギー需要の増大とともに、排出量は着実に増加してきました。これには、国の発展に伴う電力需要の増加、石炭火力発電への依存、輸送手段の増加、都市化率の上昇が寄与しています。また、2005年以降は排出量の増加幅がさらに顕著になり、2010年代後半には年間3.8億トンを超える増加が観測されるようになりました。この背景には、製造業の拡大や建設ブームなどのエネルギー集約的な産業活動があると考えられます。
2019年にはCO2排出量が38億7千万トンに達し、インドは中国、アメリカに次ぐ世界第3位の大量排出国となっています。しかし、2020年には36億9千トンとやや減少に転じています。この減少については、新型コロナウイルスのパンデミックがもたらした経済活動の停滞が大きく影響したと考えられています。ロックダウン政策による工場停止や交通機関の停止、需要の低迷が一時的な排出量減少の主因です。ただし、この減少は一時的なものであり、今後経済活動が回復するにつれて再び増加する可能性が高いと予測されます。
この状況において考慮すべき課題は、エネルギー供給の大部分を石炭火力発電に依存していることです。石炭はコスト面で経済的な利点がある一方で、CO2排出が最も高い化石燃料の一つです。これを背景に、インドでは再生可能エネルギーの導入と普及が注目されています。実際、2020年以降、太陽光発電や風力発電の設備容量が増加しており、持続可能なエネルギーへの転換が進みつつありますが、全体的なエネルギー需要を満たすにはまだ十分ではありません。
インドのような発展途上国におけるエネルギー政策は、経済成長と環境影響のバランスをとることが難しい課題です。例えば、インドは貧困対策や雇用創出のためにも工業や製造業を推進する必要性があり、これが結果的にエネルギー使用の増加につながります。一方で、これまで主要な経済成長国であった中国やアメリカにおいては、再生可能エネルギーの導入が進み、電力セクターの脱炭素化が進展しています。それに対し、インドも国際的な動きに遅れず、グリーンエネルギーの比率を高めることが求められます。
インド国内の地域間格差もまた課題の一つです。例えば、農村地域では未だにエネルギーインフラが整備されていない場所が多く、木材や薪といった原始的な燃料が使用されています。これに対して、都市部では電気自動車や公共交通機関の改善といった対策が進み始めており、地域ごとの課題に応じた異なる政策が必要です。
今後、インドは環境とエネルギー政策において多くの決断を迫られるでしょう。具体的な対策として、再生可能エネルギーへの補助金制度や都市部と農村部の間でのエネルギー分配の効率化、さらには国際的な技術協力の強化が求められます。また、政策の一貫性を確保するためには、全体的な国家戦略が必要です。これにより、インドが排出量を効率的に削減しつつ、持続的な成長を達成できる可能性があります。